買い物の事情-辻売り-

 現在では「辻」という言葉が余り使われていないので、歴史に関連する事で「辻」という言葉が出てくると、通り魔である「辻斬り」を思い浮かべてしまいそうですが、辻売りというのはそういう危ない類のものではありません。
 辻…つまり、道端で物を売る業態です。現在で言う屋台のようなものです。

 外食産業における辻売りは、現在のファーストフード的な存在で、軽く食べてスッと仕事に戻れるというタイプの物が多かったそうです。現在では和食の最高峰に立つ握りずしも、屋台で軽くつまんで食べられるという事で登場し、庶民の食べ物として広まっていきました。
 最近でこそ回転するテーブルの上で庶民に優しく普及している寿司ですが、その起源は、本当はカウンターに座って食べるものよりも、回転すしの形態に近かったのです。
 単価も非常に安価で、現在の回転寿司くらいのものだったと言われています。

 握りずしの他に、てんぷらも人気を博し、これまた安価で購入できたようです。こうした現在では高級品になってしまった商品以外にも、現在でも駅で戦う企業戦士を支え続けている立ち食いのそばやうどんも既にありました。
 特に立ち食いそばは、江戸を代表する辻売りでの食品で、様々な歴史小説などで描かれています。特に夜に営業しているので、夜鷹と呼ばれた娼婦によく利用されたといわれる「夜鷹そば」や、現在でもその名称を見かける、安価のそばの代表格である「二八そば」などが良く知られています。

 この他に、時代劇でもよく画面の端っこで子供などを相手に商売をしていたりする、団子などの菓子類を販売する辻売りも数多く存在しました。ちなみに現在でも辻売りと振り売りの中間のような業態で販売を続けている焼き芋は、江戸でも大人気の商品だったそうで、江戸の庶民の平均体重を上昇させるのに一役を買ったとまで言われています。
 食事をのんびりとするのは時間の無駄だなんて考える江戸っ子気質には、このようにサッと食べられるように出来ている辻売りが丁度良かったのかもしれません。

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