江戸の一頁
『大家 と自警』
  江戸の町には多い時期で約百万人超の人が住んでいました。
 その内の半分は武士とは言えども、彼等の仕事は江戸の治安を守ることではなく、江戸城を警護する事と、藩のお仕事をこなす事。言ってみれば町民とそう大 差は無い存在。その百万人を超える町民に充てられた役人というのはごく僅か。正式な役人は南町と北町の奉行所に所属する計290人。その人たちが調査の為 に何名かの部下(岡引など)を使うとして…そのくらいの人間が百万人の人間を管理する事が果たして出来るのか?という事に対して多くの人が疑問符を投げ掛 けています。
 それは当然といえば当然の疑問であり、人々はそれなりに自警のシステムを作っています。その中で現在では全くそういう機能を果たしていない役職の人が、 治安維持に大きな役割を果たしていることは余り知られていません。

 その職業は「大家」さん。江戸にはかなりの数の長屋がありますから、一般の人々の動向を最も管理しやすいのが、その長屋を管理している人だったんです ね。江戸で住居を借りるためには、大家さんに自分の身元を証明したりなんかしなくてはいけません。また、その身元を保証する人を立てなければなりません。
 時には紹介者を介したりなんかしたりして、怪しい人は江戸に定住できないようになっていたわけですね。不動産屋さんで部屋を借りて、家賃も通帳で振り込 んだりして、滅多に大家さんと接する事の無い現代とはちょっと違います。
 また、結婚の際も大家さんに届け出ます。この時期は特に公的な機関に届け出たりという事が無かったので、大家さんに届け出るのがそういう意味を持ってい たんでしょうね。同時にこれはその長屋に同居人が増えますよって言う連絡でもあったようです。

 ちなみにこの大家というのも現在でいう「管理人」さんに当たります。長屋のオーナーに雇われているのが「大家」という職業でした。この大家という職業が 自警の意味を持つという事を象徴するのが連帯責任の制度です。自分が管理する長屋から犯罪者が出ると、大家さんにも処罰が及びます。なのでただの管理人と は言えど、住民に対しては充分に安全性を考慮する必要や、その生活を良く把握しておく必要があったんですね。そして、そういう事を「迷惑」と思わない町民 の姿勢もあったのでしょう。
 人と人の密接な関りがあった時代ならではの「自警」ですね。そういえば、昨今の空き巣被害について、防止策としてご近所さんがお互いの家に怪しい人物が 入り込んでいないかどうかを監視しあうという事が良く挙げられます。
 しかし江戸時代には、そんなことは言われなくてもできていたのでしょう。充分な鍵や防犯システムも無かったとはいえど、江戸時代の自警もなかなか悪くな かったようです。





  
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