江戸時代に象が日本に来ていた!というと驚きでしょうか?
 これは事実で、しかも象に似せた何かや、象と偽った何か別の生き物というわけではなく、正真正銘本物の象です。

 1729年、吉宗の上覧の為にベトナムから来たもので、雄と雌一匹ずつでしたが、一匹は日本に来て三ヶ月ほどで死亡してしまいました。
 長崎から江戸へと移動し、その途中で天皇も見たというこの象。
 はっきりとした輸入目的は判っていません。
 一説には軍事的に用いれるかどうか、試しに輸入したとも言われていますが、真偽は不明です。

 この時代に象がやってきたのですから、吉宗に限らずその興味を誘われ、庶民の間でも大変話題になり、関連する書籍も発行されるほどだったそうです。

 しかし一通り盛り上がると、ブームが去るのはいつの時代でも同じで、その後は軍事転用されるわけでもなく、普通に飼育されていましたが、象なので良く食べるため食費などがかかって、厄介がられていたようです。
 ところが上覧から三年後、病気の薬として『象洞(ぞうほら)』という薬が発売される事になりました。
 この薬、なんと原料は象の糞いう驚きの商品です。
 その薬の効き目に期待をかけたのか、莫大な食費から開放されたかったのか、この時期に象はその象洞の販売業者の手に渡り、薬を売るための広告塔として、客寄せなどの興行に出演する事になりました。
 ただ、この薬の売れ行きも余り芳しくなかったようです。

 1742年にはその象も死去。
 皮は幕府へ、骨は象洞の業者が売れ残っている象洞を売りさばく為の客寄せの見世物として使い、その後にある寺へ売却され、寺の宝として重宝されていたそうですが、現在では戦災により消失してしまっているそうです。

  

戻る