読書

 江戸の識字率は同時代の世界でもトップの水準だった為に、趣味としての読書は既に庶民の間で当たり前のように行なわれていました。上方で最初に出現した幕府公認の本屋の組織である「書物問屋」、そして江戸で誕生した組織である「地元問屋」から様々な書物が発売されていました。こうした組合の登場により、それまでは存在しなかった版権という概念が出来上がり、その事によって江戸時代には専業の作家が誕生しました。

 書物問屋の方はどちらかという真面目な内容で、医学を初めとする様々な学問の専門書、それに読本と呼ばれる伝奇小説などが取り扱われていました。今でも、それに似た出版物を沢山扱う出版社というのがあるので、何となく想像できるでしょうか。
 地元問屋というのは娯楽としての本を中心に扱う出版社で、江戸文化の象徴的なものの一つである「浮世絵」も地元問屋から出されていました。
 地元問屋では比較的簡単な内容の本が多く、子供向けの今で言う『絵本』や、『漫画』のような挿絵が沢山ある本が発売されていました。絵本としての特色を強く持つのが『赤本』と呼ばれるもので、これは表紙が朱色だった事に由来しています。
 漫画的というと語弊があるかもしれませんが、絵が多く内容は大人向けのものとして知られているのが『青本、黒本』です。また、『黄表紙』と呼ばれる風刺の強い本も人気を集めていました。

 一冊が十ページくらいのものだった為に、それを繋ぎ合わせて売るのが『合巻』と呼ばれるもので、これの登場によって本の長編化が進み、その価格の上昇に対応するかのように、定価の一割程度で本を貸し出す『貸本屋』が登場しました。

 ただ、この時代なので表現に対する規制もあり、恋愛物語を描く『人情本』を代表する作家であった『為永春水』は罰されてしまいました。しかし視点を変えると、それが罰される必要があるほど、庶民が本をよく読んだという事なのかもしれませんが。

戻る