ファッション-歌舞伎の影響-

 現在でもそのファッションが多くの人々へ影響を与え、真似られる人のことを「ファッションリーダー」と呼びますが、江戸時代における代表的なファッションリーダー歌舞伎役者でした。別項でも触れている通り、歌舞伎というのは現在でこそ伝統芸能の一つですが、江戸時代においては「傾く(かぶく)」を語源に持つように、時代の最先端の象徴でした。
 その為に、人々は歌舞伎を見る際に内容や演技へ対する熱意に勝るとも劣らないほどの熱意を持ってそのファッションへ関心を示していました。江戸時代当初は女性は自らの髪は自ら結ってしまうのが普通だったのが、段々と女髪結と呼ばれる専門職が増加していった背景にも、こうした歌舞伎役者が舞台で演じる際にしていた斬新な髪形を真似るためでした。
 つまり歌舞伎役者は現在で言うところの「カリスマ」でした。

 ある程度名の知れた役者は自らの衣装を自前で用意しており、一流の役者であるためにはそのファッションセンスの高さも要求されていました。彼らのファッションは隅から隅まで大きな影響力を持っていました。その為か、人々に好評だったものは伝統的にその家で世襲として継がれていく物もありました。

 彼らの影響は髪形や帯の締め方といった、元手をかけずに挑戦できる物の他にも、着物の染め方(柄)や小物にまで及び、かんざしや草履といったピンポイントのファッションだけに留まらず、キセルなどの嗜好品、現在の感覚から言えば「キャラクターグッズ」のような感覚で日用品の柄としても、一流の役者が演技で用いたものが流行しました。

 ところで、余談ではありますが歌舞伎は江戸時代の初期に女歌舞伎が禁止されて以来、女役も男が演じていました。当時の女性のファッションをリードしていた歌舞伎役者というのは、男性だったということで、歌舞伎役者のファッションについて調べながら、衣装の選択もさぞ大変だったのだろうなぁ、などと思ってしまいました。

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